ロート製薬から学ぶ「工場の見える化」がもたらす価値 ーー 見学効率化から採用力強化まで

ロート製薬から学ぶ「工場の見える化」がもたらす価値 ーー 見学効率化から採用力強化まで
ロート製薬株式会社 様

業種: 製薬

施設種別: 工場

「人と社会、明日の世界を元気にする」というスローガンのもと、ロート製薬は医薬品、化粧品、再生医療、機能性食品など幅広い領域で事業を展開しています。2022年、同社は上野工場に「未来で戦えるスマート工場」をコンセプトとした新しい医薬品専用の生産棟を建設。最新技術や設備を積極的に導入し、強いものづくりの実現と顧客価値の最大化に取り組んでいます。


このような先進的な取り組みを進める一方で、増加する工場見学への対応に伴う現場スタッフの業務負担の増加や、強いものづくりを支える人材の採用が思うように進まないといった課題も抱えていました。この課題を解決するため、ロート製薬が導入したのが3D技術を活用した「バーチャル内覧」です。


バーチャル内覧は、写真や動画以上にリアルな工場見学体験を提供できるため、これにより見学対応の工数削減を実現。また、働く環境を具体的にイメージしやすいため、採用活動において応募者の増加にも繋がっています。


今回は上野工場の工場長を務める中村様に、導入の背景や効果、今後の展望についてお話を伺いました。


1. 自己紹介・事業紹介

はじめに、ロート製薬の事業内容と中村さんの役割について教えてください。

ロート製薬は、OTC医薬品/医薬部外品、化粧品、再生医療、機能性食品、さらには循環型農業や製品開発の受託事業などといった幅広い分野で事業を展開しています。こうした事業を通じて、ロート製薬として掲げているスローガン「人と社会、明日の世界を元気にする」を実現することを目指しています。

その中で私は、「マザー工場」と位置づけられている上野工場の工場長を務めています。「マザー工場」と聞くと、大規模で最新技術や設備を備えたイメージを持たれるかもしれませんが、実際には強いものづくりを支える優秀な人材が集まる場所です。新しい技術をどんどん取り込み進化しつつ、それを自分たちのものだけにするのではなくグループ企業に展開したりすることで、お客様により良い価値を感じてもらう。そういったことを一枚岩となってものづくりを行うのがマザー工場であり、私たちが目指している集団です。

なるほど、上野工場についてもう少し詳しく教えていただいてもよろしいでしょうか。

上野工場はOTC医薬品の生産拠点で、特に無菌製剤の点眼剤や目薬、コンタクト用剤を中心に生産しており、スキンケア分野では化粧品や部外品も手掛けています。2年前に医薬品専用の新棟を建設し、そちらでは皮膚用の外用医薬品を主に生産しています。

歴史としては2000年に稼働を開始し、当初は点眼剤の生産が中心でしたが、2005年頃からスキンケア製品の生産を本格化しました。その中で、医薬品と化粧品を同じ設備、同じ建物の中で生産するということがレギュレーション的にだんだん厳しくなってきたということもあり、2022年に医薬品専用の新棟を建設し、医薬品の生産ラインを強化してきたという流れになっています。

2. 事業の状況と抱えていた課題

様々な取り組みをされている中で、ロート製薬が抱えていた課題は何だったのでしょうか?

前述の通り、2022年に新しい医薬品専用の生産棟を建設したのですが、この棟は「未来で戦えるスマート工場」をコンセプトにしています。そのため、社内外から大きな注目を集め、多くのお客様や協力会社様から工場見学やツアーの申し込みをいただいています。その結果、月に3~4回のペースで工場見学が行われるようになり、現場の従業員は日常業務に加え、見学対応に多くの時間を割かれる状況となっていました。工場見学は、ロート製薬のものづくりの現場をお客様に知っていただく重要な機会です。しかし、見学対応に多くのリソースが取られることで、現場の作業効率や集中力が低下するという課題がありました。

確かに工場見学は重要ではある一方で、ある程度のリソースを割かなければいけないですよね。。。

そうなんです。また、海外の医薬品規制当局や行政機関からの査察対応においても、無菌室等の高い衛生環境を求められるエリアへの立ち入りが難しいケースもあり、現場の状況を正確に見ていただくことが難しいという課題もありました。我々としては、実際の現場を隠すことなく自由に見ていただきたいという想いがありましたので、どうにかできないかと悩んでもいましたね。

あらゆるステークホルダーに工場の正確な現状を伝えていくことは難しいのですね。

はい。また、別の観点ですと、採用活動においても課題が浮き彫りになっていました。昨今の人材不足の中で、求人を出しても中々応募いただけないという状況が続いていましたが、その要因の1つとして「応募者がロート製薬の工場で働く具体的なイメージを持てない」ということがありました。これは新卒採用でもキャリア採用でも同様の声が上がってきていましたので、働く環境の透明性を高めることも求められていました。

3. なぜバーチャル内覧を導入したのか

そういった中で、バーチャル内覧の導入をご検討いただいたのですね。

はい、前述のような状況が続いていたため、より効率的かつ効果的に工場の魅力や実態を伝え、業務負担を軽減するための新しいソリューションを探していました。その中で、バーチャル技術を活用することで、実際に工場に訪れることなく工場内の様子をリアルかつ詳細に伝えることが可能になるのではないか、という期待を持ってバーチャル内覧の本格的な検討・導入が進みました。

写真や動画など他の方法でも実現できたと思いますが、なぜバーチャル内覧が検討の土台に上がったのでしょうか。

まず写真の場合、何百枚何千枚の撮影が必要になりますし、見ていただきたい角度や立ち位置からの視点が限られてしまい、現場やラインの全体像を把握しづらいという課題があります。その点、バーチャル内覧は自分で見たい場所まで自由に入り込むことができます。見たい角度や場所にピンポイントで瞬時に移動できるので、何百枚もの写真を1枚ずつ開いていく必要はありません。3D構造を直接見ることができ、さらにそこから関連する場所へスムーズに移動して、リアルな視点で自由に角度を変えながら見学することができます。

また動画の場合、我々の経験からすると1工場で数千万レベルで費用がかかることもあります。その割には、のちのち編集したくても、もう一度映像を差し込んで繋ぐというのは非常に難しい。もし追加するとなるとさらにコストがかかってしまうことも難点です。その点、バーチャル内覧は編集の自由度もあり、あとで追加したいことがあってもすぐに対応いただける。そういった柔軟性やコスト面での優位性もありました。

4. 導入にあたりどのように社内を巻き込んでいったか

バーチャル内覧の導入にあたって社内での合意形成が必要になったと思いますが、どのように進められたのでしょうか?

そもそもの前提としては、ロート製薬のものづくりの良さやそこに込められた想いの部分を伝えるためのツールであるということを伝えていきました。これまでも製造現場の様子や整然としたライン、厳格な検査・製造環境といった部分を、多くのお客様に伝えていきたいと考えていましたが、リアルな工場見学となると移動含めて大きなコストがかかります。それをバーチャル内覧にすることで、より効率的にリアルに近い形で、多くの関係者に工場のことを伝えることができる、そういったことを社内で提案していきました。

さらには、単なる工場見学のツールだけでなく採用の場面で活かせたり、社員の安全を守るための避難経路の確認など、非常に広い用途で活用できることも伝えていきました。

導入を進めていく中で、壁に感じた部分やそれをどう乗り越えていったのかも教えてください。

バーチャル内覧によって精度高く工場内を再現できることはメリットでありながらも、やはり情報漏洩などにも繋がりかねないというセキュリティ面での懸念はあり、難航する場面もありました。

ただし、こういったことにも打ち手がないわけではありません。例えば、閲覧権限を絞る・ワンタイムパスワードを設定する・定期的にパスワードを更新するなど、ArchiTechさんに相談に乗っていただきながら、一つ一つ丁寧に考えていくことで解決していくことができます。実際にArchiTechさんにそうしたオペレーションを実行していただいているため、今のところセキュリティ面での問題が起きたことはありません。

やはりセキュリティ面は課題になりますよね。。。

そうですね。ただ、現在では多くの企業が工場見学をファンづくりの一環として実施していますし、以前より情報公開に対してオープンな姿勢になってきていると思います。

何を見せるか・見せないかという議論よりもお客様に何を伝えたいか・どう伝えたいかという本来の目的に立ち返ったときに、情報管理に関して必要以上に慎重になっているのかなと感じる部分もありますね。

5. 導入後どのような変化があったか

現在はどのようにバーチャル内覧を活用されているのでしょうか。

まずは、工場見学のところでかなり活用しています。直近だと、先ほどお伝えした行政からの査察の場面で使用しました。やはり、査察官の方であったとしても無菌室に入っていただくために、一定のトレーニングを経る必要がありますし、そういった時間のロスを失くすという意味でも比較的理解はされやすいところです。また、採用の場面でも活用しており、ハローワークであったり高校・大学への出張時の工場説明にバーチャル内覧を使用しています。

バーチャル内覧を活用いただいている中で感じている変化はありますか。

はい、やはりバーチャルでの工場見学の割合が増えてきているので、工場見学にかかる工数は減ってきています。

また、採用においても、新卒・キャリア問わず、よりリアルに自分が働く環境がイメージできるということで、応募者数も増えていて、それに伴い採用数も増えてきています。加えて、バーチャル内覧で視覚的に装置を見せることができるので、応募者の方がその装置を使ったことがあるのかなども話しやすくなり、即戦力であるのかどうかも判断しやすくなりました。余談ではありますが、職業就職案内の説明会でもバーチャル内覧を活用させていただくのですが、これがあることにより、他社のブースよりも注目度が高くなったことも間違いないです。

さらに、リモートで働くことが多くなっている中で、社内のオンラインミーティング等でバーチャル内覧をコミュニケーションツールとして活用することで、工場内のどこの部分を話しているのかの認識合わせがしやすくなったこともありますね。最近では、何か工場に関する議論をするときは「バーチャルで見ればいいじゃん」となっていますし、やはり視覚的に議論ができるのですごく話が早いんですよね。

今後活用の幅を広げていくとしたらどのような方法をお考えでしょうか。

一つは避難経路確認・安否確認に活用できたらと考えています。これまで社員に避難経路について説明してきましたけれども、やはり平面図だけでは中々その通りに動けるものではありません。それをリアルなバーチャル上の映像で避難経路を示しておくことで、正確に伝えることができるといったことは今後やっていきたいことですね。

あとは、設備マネジメントにも活用していきたいです。例えば、バーチャル映像の中に装置の警報やアラームが出るとかメンテナンス時期がポップアップで出るとか、そういった機能が使えるようになってくるといいですね。熟練の技術者であれば、一目見れば装置の問題やメンテナンス箇所が分かるのですが、そういった技術者も減ってきていますし、採用もできなくなっている。また、教育にも時間がかけられなくなっている中で、バーチャル技術を使って視覚的に何をすればいいのかが分かるということは、社員1人1人のパフォーマンス標準化に繋がる大きな意味を持ってくると思います。

6. メッセージ

最後に何か伝えたいメッセージがあればお願いいたします。

無菌室などクリーン度の高いエリアを持つ工場を保有している企業であれば、バーチャル技術の導入により、情報提供や工場見学のハードルを大幅に下げることができると思います。さらに、実際の見学と比べて時間を大きく削減できる点も、今後ますます大きな武器となってくるでしょう。他にも社内共有やミーティングでの活用など幅広く活用の用途はあります。製造業においては、技術や情報の漏洩リスクを懸念するケースが少なくありませんが、適切な対策を講じて、押さえるところを押さえれば、十分に活用できる有用なツールだと考えています。

加えて、人や資源の不足と合わせて技術力の低下が徐々に顕在化している中で、いかに即戦力となる優秀な人材を確保できるかが重要です。バーチャル技術を活用すれば、実際の製造現場や企業文化を分かりやすく伝えられるため、採用面でも新たな武器となる可能性があります。

さらに、各企業の工場では多様なシステムが導入されていますが、意外にも可視化が進んでいない部分が多いように感じます。バーチャル内覧のような最新技術と既存システムを組み合わせることで、今よりももっと活用幅を広げて得られる効果を大きくできるのではないかとも感じています。

是非業界の皆様と共にそういったチャレンジを続けていきたいと考えています!

ロート製薬株式会社 様

ここに会社説明テキストが入ります。ここに会社説明テキストが入ります。ここに会社説明テキストが入ります。ここに会社説明テキストが入ります。ここに会社説明テキストが入ります。ここに会社説明テキストが入ります。

https://www.rohto.co.jp/

すぐに分かる [サービス名]

ご依頼・ご質問や資料請求など、
お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ
ロート製薬株式会社 様

業種: 製薬

施設種別: 工場

Contact

ご依頼・ご質問は下記のフォームからお問い合わせください。
専門スタッフが撮影から制作までトータルサポートさせていただきます。

ご依頼・お問い合わせはこちら